2008年05月09日
商品 アナリストレポート(金)
久しぶりに商品(Commodity)アナリストレポートを掲載しておこう。
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(5月9日発行レポートより)
行き過ぎと判断
−金相場、中期的タームでは870ドル割れレベルは押し目買いに魅力−
アナリスト 松永聡慈
Fedは市場予想通り先月末のFOMCで25bpの利下げを決定した。声明文では今後の利下げ打ち止めを示唆しつつも先行き景気の減速の認識を示し、低金利の長期据え置きを市場に織り込ませようとする意図が読み取れる内容となった。極端な悲観論の後退から資金逃避の動きのアンワインドは継続し、FF金利先物やOIS市場では1年後の25bpの利上げを織り込み始めた。しかしながら、依然クレジットスプレッドは拡大したままであり、金融市場が大きく改善に向かっているとは言い難い状況が続く。
金利上昇幅が大きくなり、またそのスピードが急だったことから暫くは不安定な動向が続く可能性があるものの、少なくとも現状では、先行きボラティリティ低下とともに見通しの立てやすい短期物を中心に金利水準は再び修正に向かうことが見込まれる。ユーロ/ドル相場との高い相関性は維持されることが見込まれ、短期的なドル高局面が終局を迎えるとともに貴金属相場は再び騰勢を取り戻すこととなろう。
■オーバーシュートが顕著だった金相場への調整圧力が強まる
Fedは前月末開催のFOMCでFF金利誘導目標を25bp引き下げ、市場予想通り声明内容も利下げサイクルの一時停止を示唆したが、同時に追加利下げの可能性についても含みを持たせており、タカ派寄りの姿勢を鮮明としたというよりも今後の経済指標の内容次第では更なる追加緩和措置の実施もあり得るという姿勢を示唆したことが市場での失望売りを誘った。しかしながら裏を返せば、声明文は今後の利下げ打ち止めを示唆しつつも先行き景気の減速の認識を表明し、低金利の長期据え置きを市場に織り込ませようとする意図が読み取れる内容であるといえる。
年初のISM製造業景況指数の著しい悪化を起点に市場の焦点は実体経済の動向に移り、新興国株式市場を巻き込みながら株式市場の急落、ドル安著しい速さで進行した。その際顕著となったのはクレジットスプレッドの拡大であり、対ドルでの円の急上昇などとともに債券市場上昇、そして金相場の上昇が顕著となった。その後、Fedによる緊急利下げ後の一端の緊張緩和を挟みながらも、3月17日のベア・スターンズ救済まで一連の債券高、金相場上昇は続いた。
しかし、度重なる流動性対策が奏功し流動性に対する市場の緊張緩和は進み、結果として債券利回りの著しい上昇、株価の戻りと時を同時に金相場は大幅な調整局面を迎えた。ダウをはじめ米国主要株価指数は前週末時点で年初来の下げのその大部分を取り戻した。また、同様にユーロ/ドル、ドル/円など為替相場の戻りも大きなものとなったことがわかる。ただし、それらは未だ年初からの推移では値を一部戻しているに過ぎず、およそ1ヶ月間に100bp上昇した債券利回りや、昨年末水準まで下落した金相場により大きな影響が及んでいることが分かる。
■景気の拡大期待を伴わない長期金利上昇は持続的でない
足許の相場調整局面でも金相場はユーロ/ドル相場と依然高い相関を保っており2−3月に見られた原油相場との相関は足許では崩れている。すなわちドル高局面での相場下落は顕著で、ボラティリティ増大とともに下落圧力はいっそう強まっている。しかしながら、サブプライム・ローン問題が顕在化した昨年後半以降の両者の関係性における動向からは足許の金相場の水準は1標準偏差下限付近に達しており、明らかな売られ過ぎと判断される。先月以降発表されてきた経済指標は米ISM製造業・非製造業指数、雇用統計など悲観的過ぎる市場予想を若干上回ったとはいえ決して先行きをポジティブとする内容ではなく、また市場予想をさらに上回る悪化を辿る住宅関連指標を含め、これら内容は今後の更なる景気後退を予期させるものとなっている。労働生産性の予想外の堅調さも裏を返せばインフレ圧力の軟化を想起するものであり、ドルの長期的な支援材料とはなり難い材料と判断される。・
金利上昇幅が大きくなり、またそのスピードが急だったことから暫くは不安定な市況が続く可能性があるものの、過去の金利上昇時と比べても持続的に中期物の金利が上昇するにはその背景が希薄といえる。景気の拡大期待を伴わない長期金利上昇は持続的でないといえ、少なくとも現状では先行きボラティリティ低下とともに見通しの立てやすい短期物を中心に金利水準は再び修正に向かうことが見込まれよう。
■中期的タームでの低金利見通しの広がり、ドル安基調が金相場の支援要因に
中期的タームではFOMC声明での低金利政策の長期据え置きを市場に織り込ませようとする意図が浸透するにつれ債券相場は短い年限から再び金利は低下に向かい、それに伴いドルは年後半にかけ再度地合いを軟化する可能性は高いといえよう。欧州圏では最近の経済指標内容から成長力に対する信頼が失われつつあるが、とはいえインフレ期待は抑制されておらず、年内にECBが利下げを実施されるというサプライズは考えにくく、ユーロ/ドル相場が1.55ドルを回復する過程での金相場の870ドル割れレベルは絶好の押し目買い機会だと思われる。
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(5月9日発行レポートより)
行き過ぎと判断
−金相場、中期的タームでは870ドル割れレベルは押し目買いに魅力−
アナリスト 松永聡慈
Fedは市場予想通り先月末のFOMCで25bpの利下げを決定した。声明文では今後の利下げ打ち止めを示唆しつつも先行き景気の減速の認識を示し、低金利の長期据え置きを市場に織り込ませようとする意図が読み取れる内容となった。極端な悲観論の後退から資金逃避の動きのアンワインドは継続し、FF金利先物やOIS市場では1年後の25bpの利上げを織り込み始めた。しかしながら、依然クレジットスプレッドは拡大したままであり、金融市場が大きく改善に向かっているとは言い難い状況が続く。
金利上昇幅が大きくなり、またそのスピードが急だったことから暫くは不安定な動向が続く可能性があるものの、少なくとも現状では、先行きボラティリティ低下とともに見通しの立てやすい短期物を中心に金利水準は再び修正に向かうことが見込まれる。ユーロ/ドル相場との高い相関性は維持されることが見込まれ、短期的なドル高局面が終局を迎えるとともに貴金属相場は再び騰勢を取り戻すこととなろう。
■オーバーシュートが顕著だった金相場への調整圧力が強まる
Fedは前月末開催のFOMCでFF金利誘導目標を25bp引き下げ、市場予想通り声明内容も利下げサイクルの一時停止を示唆したが、同時に追加利下げの可能性についても含みを持たせており、タカ派寄りの姿勢を鮮明としたというよりも今後の経済指標の内容次第では更なる追加緩和措置の実施もあり得るという姿勢を示唆したことが市場での失望売りを誘った。しかしながら裏を返せば、声明文は今後の利下げ打ち止めを示唆しつつも先行き景気の減速の認識を表明し、低金利の長期据え置きを市場に織り込ませようとする意図が読み取れる内容であるといえる。
年初のISM製造業景況指数の著しい悪化を起点に市場の焦点は実体経済の動向に移り、新興国株式市場を巻き込みながら株式市場の急落、ドル安著しい速さで進行した。その際顕著となったのはクレジットスプレッドの拡大であり、対ドルでの円の急上昇などとともに債券市場上昇、そして金相場の上昇が顕著となった。その後、Fedによる緊急利下げ後の一端の緊張緩和を挟みながらも、3月17日のベア・スターンズ救済まで一連の債券高、金相場上昇は続いた。
しかし、度重なる流動性対策が奏功し流動性に対する市場の緊張緩和は進み、結果として債券利回りの著しい上昇、株価の戻りと時を同時に金相場は大幅な調整局面を迎えた。ダウをはじめ米国主要株価指数は前週末時点で年初来の下げのその大部分を取り戻した。また、同様にユーロ/ドル、ドル/円など為替相場の戻りも大きなものとなったことがわかる。ただし、それらは未だ年初からの推移では値を一部戻しているに過ぎず、およそ1ヶ月間に100bp上昇した債券利回りや、昨年末水準まで下落した金相場により大きな影響が及んでいることが分かる。
■景気の拡大期待を伴わない長期金利上昇は持続的でない
足許の相場調整局面でも金相場はユーロ/ドル相場と依然高い相関を保っており2−3月に見られた原油相場との相関は足許では崩れている。すなわちドル高局面での相場下落は顕著で、ボラティリティ増大とともに下落圧力はいっそう強まっている。しかしながら、サブプライム・ローン問題が顕在化した昨年後半以降の両者の関係性における動向からは足許の金相場の水準は1標準偏差下限付近に達しており、明らかな売られ過ぎと判断される。先月以降発表されてきた経済指標は米ISM製造業・非製造業指数、雇用統計など悲観的過ぎる市場予想を若干上回ったとはいえ決して先行きをポジティブとする内容ではなく、また市場予想をさらに上回る悪化を辿る住宅関連指標を含め、これら内容は今後の更なる景気後退を予期させるものとなっている。労働生産性の予想外の堅調さも裏を返せばインフレ圧力の軟化を想起するものであり、ドルの長期的な支援材料とはなり難い材料と判断される。・
金利上昇幅が大きくなり、またそのスピードが急だったことから暫くは不安定な市況が続く可能性があるものの、過去の金利上昇時と比べても持続的に中期物の金利が上昇するにはその背景が希薄といえる。景気の拡大期待を伴わない長期金利上昇は持続的でないといえ、少なくとも現状では先行きボラティリティ低下とともに見通しの立てやすい短期物を中心に金利水準は再び修正に向かうことが見込まれよう。
■中期的タームでの低金利見通しの広がり、ドル安基調が金相場の支援要因に
中期的タームではFOMC声明での低金利政策の長期据え置きを市場に織り込ませようとする意図が浸透するにつれ債券相場は短い年限から再び金利は低下に向かい、それに伴いドルは年後半にかけ再度地合いを軟化する可能性は高いといえよう。欧州圏では最近の経済指標内容から成長力に対する信頼が失われつつあるが、とはいえインフレ期待は抑制されておらず、年内にECBが利下げを実施されるというサプライズは考えにくく、ユーロ/ドル相場が1.55ドルを回復する過程での金相場の870ドル割れレベルは絶好の押し目買い機会だと思われる。
